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突然ですがこちらに移転しました。

岩波新書『大工道具の歴史』は素晴らしくおもしろかった

タイトルを見れば面白そう。で、実際に読んでみたら期待以上に面白かった。

昭和41年生まれのぼくの世代あたりが、大工道具が身近にあった最後の世代になるのかもしれない。もちろん地域的な違いはあるにきまっているけれど。

いろいろな道具が懐かしく、そして自分の知識のなさが悔しく、それでありながら非常に面白い本だった。

第一章 道具再見
第二章 ノコギリ(鋸)
第三章 カンナ(鉋)
第四章 オノ(斧)・チョウナ・ノミ・ツチ(槌)・キリ(錐)
第五章 ブンマワシ(規)・マガリカネ(矩)・ミズハカリ(準縄)
第六章 スミツボ(墨壺)
第七章 トイシ(砥石)
第八章 大工道具の産地

大工の世界にも「機械化」が進みつつあったらし発刊当時(1973年)。失われる伝統や技術についての筆者の「憤り」のようなものは、ときにあまりに強すぎるようにも感じられる。ただ、確かに本書にあるような、あまりに面白すぎる文化が失われていくのは残念なことだったのだろう。

参考になる図がそんなに多くはなく(最低限レベルには掲載されている)、わかりにくいところも多いのかなとは思う。しかしインターネット時代の今であれば、必要な情報は自分で集めてくることもできる。

異世界との触れ合いが楽しく、確かに「昭和の岩波新書」とはこうしたテイストを持っていたものだと、岩波新書自体についても懐かしく思い出す好著。

読んでいる間ずっと、充足感を感じ続けさせてくれる本だった。