言葉の話だけど、辞書を引くわけじゃないのでこちらに。話のもとは『理想の国語辞典』。
やや流行気味の辞書関連本と違って(出版年も相当に前だ)、あまり軽いノリはないので要注意。この中にあったのが「偽・目的語」の話。
「肌を脱ぐ」という慣用句がある。この「肌」は表面的には「脱ぐ」の目的語になっているが、意味的にはそうではない。これは、本来の目的語が省略された表現と見ることができる。
ああ、そりゃそうだ。「慣用表現だから」ということできちんと分析しなかったけれど、「偽・目的語」シリーズなんだな。いくつか例が挙がっている。
括弧の中に、本来の目的語と考えられるものを補記。
(1) ノート(に記録)を付ける。
(2) タバコ(に火)をつける。
(3) 黒板(の字)を消す。
(4) 腕(の袖)をまくる。
(5) 役所(から身)を退く。
2番とか3番は「つける」とか「消す」の意味が変わっているんじゃないかとも思ったりする。
ちなみにこの「偽・目的語」解説は本書の中のごくごく一部。参考のために目次を書いておこうかな。
第一部 国語辞典ここが足りない
一 類義語の識別
ニ 日常語の意味
三 助詞の記述
四 文系の記述
五 連語
六 定義の堂々巡り第二部 多義語
七 多義語と同音異義語
八 多義の意味関係
九 多義語の構造化第三部 辞書の記述
十 記述項目
十一 辞書記述見本
まだ「類義語」のところを読んでる。「着陸と着地」の違いなんかにもこだわっている。
「着地」と「着陸」の違いは何か。「いまのところ『着陸』が使われるのは、飛行機、飛行船、ヘリコプター、宇宙探査機に限られるようである。…『気球』は(含まれない)」 via 理想の国語辞典
— maeda hiroaki (@torisan3500) 2014, 3月 1
当然ながら多くの辞書を参照している。よく引かれる類語辞典で持っていないのがある(ってか、類語辞典、紙版は1冊しか持っていない)。欲しいのはこれ。
これとは別なのかな? 新しいものもあるみたいだ。
類語辞典、ぜったいに面白くなるはずと思うんだけど、手にとって見ると意外に面白くないものもあったりするんだよな…。編集方針とかが難しいものなのかもしれない。