ヰタ・セクスアリス
2月3日の日経夕刊。「文学周遊」という欄で『ヰタ・セクスアリス』が取り上げられている。
(前略)1909年、文芸雑誌「スバル」に発表した自叙伝的短編小説。(中略)当時、ポルノグラフィーとみなされ、「スバル」は発売禁止処分となった。とある。
おかしい。もう30年近くも前とは言え、その小説で「出歯亀」と「山東京伝」を知ったと記憶している小説。あれが「ポルノグラフィー」であったとは思えない。あるいは中学生が購入した『ヰタ・セクスアリス』は何か検閲の施されたものであったのか。
そんなことを思い、青空文庫の『ヰタ・セクスアリス』を読んでみた。
ふむ。確かにポルノグラフィーではない。1909年という時代とは言え、これがポルノグラフィーと捉えられたのには何か理由があったかなあ。あるいは小説の形を取りながら自伝的でありすぎるところがひっかかったのかな。
本書を再読して思い出したこと。
僕はこの時「おかんこを頂戴する」という奇妙な詞を覚えた。しかしこの詞には、僕はその後寄席以外では、どこでも遭遇しないから、これは僕の記憶に無用な負担を賦課した詞の一つである。この「僕の記憶に無用な負担を賦課した」という言い回しがあまりに面白い。当時、友人たちとこのような言葉を多用して戯れていた。