また、主人公がネズミを飼っているのもいけない。知的障害者とネズミと言えば誰もが思い出す「あの作品」があるわけだし。
さらに章立てが素数ってのもちょっと本を斜めにして眺めたくなる。どこかに障害を持ち、しかしながら特定の分野にあまりに優れている人というのは「ネタ」に使いやすい。下らないバラエティ番組なんかにも頻繁に登場する。
いろんな偏見を敢えて喚起して、その中で手に取るのは「ガーディアン賞受賞」の帯宣伝のみか。
ただ、物語は面白かった。「感動的」というのでもなく、「障害者の心を描いた」というわけでもないと受け止めた。しかし完成度の高い「物語」として、面白かった。
知的障害者とネズミに関する「件の名作」を書いた作者は、後に下らない「カブレモノ」を立て続けに発表した。ヘタに「障害者」(あるいはネズミ)に肩入れするだけでない作品を書いた本作品の著者であれば、今後も名作を発表してくれると期待したい。