黒門亭で「宿屋の富」と「鰻の太鼓」、「火焔太鼓」を聴いてきた
GW落語第一弾は黒門亭。「宿屋の富」と「火焔太鼓」の演目が事前に発表されていたので行こうと決めたもの。
両方を聴くには一部・二部の両方を聴かなくちゃいけない。で、黒門亭は畳に座るので壁にもたれかかれる席が一等席(畳に座り慣れないぼくにとってはということ。昔は何時間正座をしていても平気だったんだけどなあ)ということになる。
そんなわけでちょっと早めに到着して無事壁際ゲット。ただ今日はすいていたので、壁際でなくてもさほど疲れなかったかもしれない。
本日の黒門亭一部 #rakugo posted by (C)torisan
まずは前座の柳家フラワー。語りだしがやけに緊張気味でちょっと笑ってしまった。でもこれが逆に「頑張れっ!」なんて思わせる素振りでナイスかもしれないな。客の下足番も兼ねるまめまめしさもあって好感度は高いぞ(^^)。
二番手は三遊亭金時「鰻の幇間」。演目はアナウンスされていたのかなあ。ちょうど始まる前に『志ん生的、文楽的』(平岡正明)の「鰻の幇間」についてのところを読んでいるところだった。シンクロニシティだな。
ちなみにこの「鰻の幇間」。文楽と志ん朝でしか聴いたことがない。徹底的に幇間をやっつけながら滑稽味を失わない志ん朝版がすごく気に入っている。志ん朝がすごく楽しそうに演じるんだよな(DVD)。落語名人会27に収録されている「御慶」と同じくらいにノリノリの志ん朝が楽しめる。
今日の「鰻の幇間」も志ん朝版に近いのかなと思ったんだけど、少々時短版なのかなあ。鰻屋行く途中に幇間の下駄に注目するくだりはあった方が面白いと思うんだけどなあ。
自分の高価な下駄を履いて帰られたとき、志ん朝は「やられた」の思いと「あいつ、すげえな」の気持ちを出してる。それが鰻屋への往路で幇間の履物に注目することによって仕込まれると思うんだよな。ただ今日の演じ方では、履物についえては「がっかり」の気持ちを前面に出していたみたい。だから解釈が違うということなのかもしれない。
ちなみに自分の服の中に仕込んでいた十円札。丸まって自分の側に戻ってきたがっているというくすぐりはあまり面白くなかった。ただそれを見た女中が「芸人は面白い」とつぶやくシーンでは爆笑してしまった。十円札が帰ってこようとするってのはなんだかくどい感じがするんだけど、あの女中発言の面白さを考えればありなのかな。
橘家二三蔵の「神田松五郎」ってのは初めて聴いた。ひきとった子供の悪童ぶりと、その悪さの本当の原因を示す辺りにちょっと唐突な感じを受けてしまった。初めて聴く話だけに、大事なところを聞き漏らしてしまったのかもしれない。
柳亭小燕枝の「意地比べ」も初めて。主人公になりそうな人物がたくさん登場してちょっと混乱した。「意地」の話なら「恩金」なんていう人情系の単語が出てこない方が面白い話になりそうだな。ただこれも、初めて耳にする噺なので大事なところでぼーっとしてたのかもしれない。本当は噺を聴く前にきっちり勉強していきたいなあ。
そして次が本日のお目当てその一だった三遊亭金兵衛の「宿屋の富」。これも最初は志ん朝のDVDで見てすごく気に入った噺。こちらは志ん生、志ん朝、笑福亭松鶴のCDもある(笑福亭松鶴は「高津の富」)。枝雀のDVD(やはり「高津の富」)も持ってる。
「子の1345番」が自分の番号と違うと思い込むところの見せ方はやっぱり志ん朝が出色だと思ってる。あそこはやっぱり間や振る舞いで見せて良いんじゃないかと思う。
今日の演出では、この当選番号の見間違いシーンよりも、その後の宿屋でのシーンに重きを置こうとした様子。それはそれで面白い試みなのかもしれない。
黒門亭第二部 posted by (C)torisan
二部もまたフラワーの噺で始まり。噺はよくある「道灌」。今回の方が緊張も消えて良かったと思うな。まあ彼のことを「応援」するモードになってたから贔屓耳になってんのかもしれないね。
ところでこの「道灌」に出てきたクスグリ。「粗末な家があばら家なら立派な家は背骨家かい?」というクスグリに反応してしまった。このクスグリはよくあるもの? ぼくの記憶にはあまり残ってない。よくあるものだとしても、このクスグリをちゃんとぼくの耳に届けてくれたのはナイス。
古今亭志ん橋は「天災」。「雨だ雨だ」と走っていくシーンが面白かった。「天災」は以前柳亭小燕枝のものを聴いているな。話自体はあまり好きじゃない。紅羅坊名丸(べにらぼうなまる)に説教をくらったのちに「お前に喧嘩を回さなくちゃいけないんだけど」というシーンが気に入っているんだけど、今日はちょっとそのやりとりが軽かったな。
古今亭菊千代の「厩火事」は、相談に行く相手が女の人に変わってた。ぼくにはまだこういう改変を受け入れる能力がない^^。
そして古今亭菊太楼は「火焔太鼓」。これは志ん朝のDVDに2つ入っており、CDは志ん生のものを持っている。志ん朝のDVDは「松の木」をめぐって別解釈があり興味深い。
今回の古今亭菊太楼はネタ下ろしなのかなあ。1週間後にはまたバージョンアップした版をお聴かせするというような噺をしていた。
噺は面白く聴かせてもらったんだけど、奥さんとのやりとりに色が少なかったかなあ。一応、旦那対女房の対立関係はあるものの、そこに面白さを持ち込む演出じゃあなかった。今日の演出でも大名屋敷の松の木に注目するシーンはあったんだけど、それをやるのなら女房とのやりとりにもっと色を持ち込んだ方が面白いように思う。
ただ、確か志ん朝版でも後期のもので「松の木」を軽く扱ってたように思うので(勘違いかもしれない)、いろいろと理由があるところなんだろうな。
あと、大名屋敷に持ち込んだ時点での古道具屋の「逃げ腰具合」はもっと強く描いた方が面白いと思う。今日の演出でもいくつか「逃げ腰」を表現するところがあったけれど、それならばそのための仕込みがいるんだと思う。
なぁんて。
今日の感想はすべからく偉そうだ。2月に落語デビューをして3ヵ月。4分の1年が経過した。ちょっと偉そうに書いてみようかと頑張ってみた(笑)。