「愛宕山」、「黄金餅」、そして「千早振る」。独演会でこの3つが口演されるとする。するとどういう順序を想定するだろう。
落語歴1年程度の野郎が考えるに、まあ「とりあえず『千早振る』が最初なのかな」ってな感じ。この話がトリ噺になるとは考えもしない。「なんで千早振るなんてやるんだろうなあ」などと考えつつ、会場に向かうことになる。
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でも、21日に行われた「東京マンスリー」。古今亭菊志んがトリネタに選んだのは「千早振る」だった。
ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは
この噺、サゲがつまらないと考える人が多いのか、最後にいろいろと工夫を入れるというのがむしろ「お約束」のようになっている面もある。個人的には「そんな工夫はいらないからスタンダードでやれよ」なんてことも思ってしまうけれど、まあ工夫してみたくなる噺なんだろう。
今回はどうなのかな、と思いつつ聞いていた菊志んの噺は、最初から相談を受ける隠居の「振る舞い」に焦点が当てられる。隠居が無知であるのに、見栄を張って八五郎の話に合わせる「振る舞い」が強調される。なるほど、そこを面白いクスグリとして話を完結させるのかな、なんて考えてた。
甘かった。
この隠居の振る舞いは、サゲに向かっての完璧な伏線。「トハってのはなんです?」とお決まりのやり取りが流れる中、突然やってくる結末。冒頭からの隠居の「振る舞い」描写がフラッシュバックで頭に蘇る終幕。
不勉強ながら他にこういう展開をしている人がいるのかどうかは知らない。菊志んが他でこの展開をやっているのかも知らない。だけどかなり強烈だった。これはぜひとも一度見ておくべきだなあ。
「千早ふる」にはいろんなツボを置いてあります。 "@Pomotomo001:ちはやふるが個人的にツボで『シンジャオウカナ』の棒読みがニヤニヤポイントでした♪
— 古今亭菊志んさん (@kikusing0704) 4月 22, 2012
ところで「黄金餅」。よく落語評などで「陰鬱な話を軽いタッチで…」なんてことが言われる話。ただCDなどで聞く限りはそんなに「陰鬱」な感じもしない。でも今日の「黄金餅」は怖かったな。途中が怖かっただけに、最後に菊志んが口にした「おめでたい」話だという言葉が聴衆の安堵を誘って大いにウケていた。
チャレンジなのか菊志ん的定番なのかはわからない。でも個人的にはチャレンジを感じたな。楽しい一日でした。