今月は奥泉光。『鳥類学者のファンタジア』と『桑潟光一准教授のスタイリッシュな生活』を読んだ。
「鳥類学者」の方は「ちょっとジャズ」かとおもいきや、「ぜんぶジャズ」の話。「鳥」もジャズの方のバードで、「鳥類学者」は関係ない。
ジャズ三昧な時間を過ごしたことのある人ならとても面白く感じるんじゃないのかな。
「ジャズを扱っている」だけでなく、モチーフも文体もみんなジャズって感じ。主なターゲットはバップ。でもクラシックからフリーの触りまでをカバーしている感じ。
本書を読んでから、人生何度目かの大ジャズブームを迎えてしまっている。
奥泉光でもう一冊読んだ「桑潟光一」は「ぜんぶ落語」。「落語の話をするね」の部分はもちろん落語だし、あるいはまた明示せずにひっそりと落語の話を隠していたりする(文楽バージョンの「寝床」など)。
この本を読みながら何度も「この本を読む必要はあるのかなあ」と自問してしまたんだけど、それはすなわち落語と同じであるということだ。著者がたいへんうまく「落語」を取り込んでいたんだと思う。
あとは…。「ムーミン」が面白かったかな。
30年ほど前、ムーミンの本はしばらく手元にあった。でも結局読まずに過ごしてしまった(いつの間にか失われた)。小説は今回が初読み(アニメは何度か見たことがある)。
個人的にはアニメよりもずいぶんと味わい深い感じだった。もしかすると他のシリーズも買ってしまうかも。
ところで敢えて追記しておくけれど『実存と構造』はつまらないと思う。
以下、3月に読んだ本。
2015年3月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:4761ページ
ナイス数:147ナイス小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫)
読了日:3月31日 著者:トーベ・ヤンソンWonderful Story
読了日:3月29日 著者:伊坂幸犬郎,貫井ドッグ郎,犬崎梢,木下半犬,横関犬桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)の感想
「高校時分、自分もまた太宰治を読んで、自分は文学が好きな人間だと勘違いしたのだった」と自覚する、文学系准教授を巡る物語。
読了日:3月28日 著者:奥泉光あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫)
読了日:3月24日 著者:井上夢人園芸少年の感想
(どうせ)男女のお話なんだろうと思ったら、ほぼ純粋に「園芸少年」のお話だった。「絶対通り過ぎる」ところで立ち止まることで見えてくるモノがあるんだよな〜。面白いお話でした。
読了日:3月23日 著者:魚住直子成長から成熟へ さよなら経済大国 (集英社新書)の感想
意図的に商品寿命を縮められている消費財があるという、いかにも陰謀論的な話を、やはりあまりに陰謀論的な語り口で語りすすめるところから始まる本。このお花畑的な出だしで読むのを諦めてしまう人も多いんだろうな。CMや商品の歴史などについては、まずまず楽しめる本ではあった。
読了日:3月21日 著者:天野祐吉実存と構造 (集英社新書)の感想
「初期の中上健次の作品は、地方出身者の孤独という、ありきたりなテーマで、粗暴な若者の生態が、ごくシンプルに描かれるだけの作品だった」とか「中上健次はハッタリが得意でなんでも知っているような口ぶりで話すことが多かった」など。当時を振り返って「私怨か」と疑いたくもなるような記述もたくさん。「本人が頑張れば実存で、神話的枠組みが出てくれば構造」くらいな分析に感じてしまった。
読了日:3月20日 著者:三田誠広鳥類学者のファンタジアの感想
「なにか楽しいことを考えて退屈な時間をやりすごそうと思い、煮干しの出汁のきいたワカメの味噌汁や、あつあつのご飯にかけた納豆や、皮のぱりぱりに焼けた餃子や、汁に脂の浮かんだ豚骨ラーメンなどのことを考えていた」という女性が主人公。そんなキャラクターにあまりにマッチする口調により物語は進む。そして通底音は口調にあまりにマッチする「ジャズ」。ラストシーンは主人公と一緒に鳥肌を立てた。「あんなもんチュニジアの夜じゃない。チュニジアの霧だな」と結びたいところでもあったが、それはあまりに狙い過ぎか。面白かった。
読了日:3月18日 著者:奥泉光1週間の物語 (タイムストーリー)
読了日:3月16日 著者:ヒエログリフを書こう!の感想
ヒエログリフってのは当時の人にも難しく「古代エジプトのごく平均的な書記で、仕事に支障が出ないだけの象形文字をすべて覚えるのに12年かかった」んだそうな。ちなみに本書、「ヒエログリフが読めると、3千年前の呪いを避けることができます」という実用書でもある。
読了日:3月16日 著者:フィリップアーダNHK さかのぼり日本史(1)―戦後 経済大国の“漂流”の感想
筆者の思想的方向性に基づく記述をときにうるさく、あるいは怪しく感じてしまうかも。ただし並べられる歴史アイテムはそれぞれ一面の「真実」であり興味深い。
読了日:3月13日 著者:五百旗頭真独居45の感想
伊坂幸太郎曰く「あまりの迫力に驚きました。作中作の、次から次にに人が虐殺されていく、あの息苦しさと恐ろしさ、そしてリアリティに圧倒されました」 via KAWADE夢ムック「総特集伊坂幸太郎」
読了日:3月9日 著者:吉村萬壱森の紳士録―ぼくの出会った生き物たち (岩波新書)
読了日:3月6日 著者:池内紀日本人の法意識 (岩波新書 青版A-43)の感想
「明治時代に生まれた諸法典が西洋的なものとなったのは、当時の日本の国民生活の大部分において、法律を西洋的なものにするような現実的な或いは思想的な地盤が普遍にあったからではなくて、不平等条約を撤廃するという政治的な目的があったことは否定できない」という観点から、すなわち「明治期の壮大な法典の体系は鹿鳴館と同じく、『文明開化』の日本の飾り、後進国日本の飾りであった、と言ってよいと思う」という視点から、法意識の歴史を分析する書。「今では古い」とか、「日本の後進性を批判した」とか、そういう目的の本ではない。
読了日:3月4日 著者:川島武宜警官の貌 (双葉文庫)の感想
今野敏以外を知らないので読んでみた短篇。著者を知ろうという考えなら、やはり個人によるものを読んだ方が良かったのだろうな。
読了日:3月4日 著者:今野敏,誉田哲也,福田和代,貫井徳郎くさり―ホラー短篇集 (角川文庫)の感想
全集も持っている大好きな作家。短篇やジュブナイル分野ではわりと「軽さ」を前面に出す人なので好みがわかれてしまうかも。「ホラー」ならば、ぜひ「走る取的」や「乗越駅の刑罰」、あるいは「熊の木本線」などをいれて欲しかったかな。
読了日:3月2日 著者:筒井康隆伊坂幸太郎---デビュー10年新たなる決意 (文藝別冊)
読了日:3月1日 著者:総理の夫の感想
総理の夫は鳥類学者。「総理」と出会ったとき、相手になかなか声がかけられず、鳥を羨む。「鳥類は本能のままに、メスを振り向かせようと必死になる。どんなにイケてない個体でも、そこは本能なのだ、メスを口説かずには、彼らは生きてゆけない」。
読了日:3月1日 著者:原田マハ“教育力”をみがく (寺子屋新書)の感想
著者が全日制の高校生に行った「許せることアンケート」がなかなか面白い。以下、「%」は「許せる」率。親は子供を殴って良いが、子供が殴るのは危険信号ということか > 高校生のバイト 100%、未成年の飲酒 88%、電車の中で化粧 59%、援助交際 21%、万引き 10%、親が子を殴る 55%、子が親を殴る 19%、不倫 26%、 映画館内で鳴る携帯 0%
読了日:3月1日 著者:家本芳郎
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