もちろん、ぼくが「何も知らない奴」だという前提条件はある。これでもかと「知らないこと」を教えてくれたこの本は、本当に面白かった。
いつも目についたところを拾い読みしていたんだけど、ようやく通読してみた。

新しい高校生物の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)
- 作者: 栃内新,左巻健男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/01/21
- メディア: 新書
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いちばん驚いたのは、生物学における「異化」の話。ぼくは「異化といえばシクロフスキー」な知識しかもっていなくて、生物学で「異化」を使うことの異化作用にやられた感じ^^。
こんな文脈で出てくる。
光合成は外部から取り込んだ物質を、自分のからだを構成する有機物に変換する過程(同化の一種)だが、呼吸はその逆で、有機物の分解によってエネルギーを得る過程化の一種)である。
あるいは、体細胞分裂と、単細胞生物の生殖との類似(同一)性は意識したことがなかった。
体細胞分裂においては、もとの細胞と分裂によって新たにできる細胞は突然変異が起きない限り同じ遺伝情報を持っており、完全なコピーである。つまり、単細胞生物が無性生殖として行う細胞分裂と、多細胞生物が成長するときに行う体細胞分裂は、同じタイプの分裂なのだ。
もちろん「言われてみれば当然」なんだけど、「そんなふうに考えたことはなかった」んだ。
神経信号の伝わり方についての記述も、比喩じゃないのに比喩みたいで楽しい。
刺激された1カ所が興奮すると、この興奮部のすぐ隣の部分隣接部) との間に電位差が生じ、電流が流れる。この電流を活動電流という。活動電流は隣接部を刺激することになるため、隣接部も興奮する。隣接部分が興奮すると、さらにその隣接部に活動電流が流れ、その部を興奮させる。
面白いところだらけなんだけど、「記憶」の話も面白い。ずっと前に、再生後の「プラナリア」も、再生前(分裂前)の記憶を引き継ぐという話があった。
再生されたのが「記憶」なのかどうかは疑問だと思うけれども。 / “首を切断された『プラナリア』は頭の再生と同時に記憶も再生される事が明らかに - アクアカタリスト” http://t.co/VTQ5UxwqZ6
— maeda hiroaki (@torisan3500) 2013年7月18日
「それを記憶と呼んで良いのだろうか」と悩んだんだけど、本書の中にも面白い「記憶」がでてくる。
体内の乱れを感知し、侵入してきた寄生生物を排除し、よそ者のいないもとの状態に戻す働きを生体防御と呼ぶ。生体防御は植物や無脊椎動物にも見られるが、脊椎動物で特に発達し、記憶を持つようになったものを免疫と呼ぶ。
どうなんだこれ。「記憶」なのか?
いろいろ刺激的で、ほんとうに面白い本だった。

- 作者: 左巻健男
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2007/02/25
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面白くて眠れなくなる地学 (「面白くて眠れなくなる」シリーズ)
- 作者: 左巻健男
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/12/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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