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柳家さん若の「粗忽の釘」が面白かった池袋演芸場

日曜日。夕方から池袋演芸場に行ってきた。てっきり昼夜入れ替えだと思っていたけれど入れ替えなし。「あちゃ~」と思ったものの、昼席を終えて帰る人も多く、問題なく好きな席に座れた。

本日の池袋演芸場 #rakugo
本日の池袋演芸場 #rakugo posted by (C)torisan

柳家さん若という人の「粗忽の釘」が面白かった。釘を壁に打ち込む理由に「巣を張っていた蜘蛛をやっつける」という理由を入れてたな。「蜘蛛をやっつけるってのは他の人もやってる構成ですか?」に「あまりやる人はいませんね」という話だった。

理由がなくても「粗忽だから」とか、「女房がうるさいから腹を立てた」とかいろいろと想像できるところではある。でも明確な理由を入れるのも面白い。釘を打ち込んだ直後に「柱にそんなに長い釘を打ち込んだのかい?」と女房に言わせるあたり、「蜘蛛-壁」の理由付けを強調する意識が見えて面白かった。

で、あとはなんだか楽屋ネタも多い一日だったな。そういうのも「ライブ」感で面白いのかもしれないけれど、個人的にはあまり面白くは感じ無い。

そうそう、面白くないと言えば、ストーリーの中に無理やり現代風のくすぐりをいれるのも好きになれない。まくらなら気にならない。でも、たとえば「死神」の呪文に「アチャラカモクレンラブチュウニュウ」と入れるようなのは全く面白いと思わない(そもそも「ラブチュウニュウ」とかなんとかってのが何かわからないってのもある)。

今日もたとえば桃月庵白酒の「真田小僧」。冒頭の「親孝行」のシーンで「今、首相官邸に無言電話をかけている」なんていうクスグリをいれていた。開場は湧いてたけど、個人的には全く興ざめに感じる。ま、噺家も観客も、そこに面白さを感じるのかなあという納得(諦観?)はある。

あと、すごく残念なのは「金明竹」。大阪商人の言葉の解説部分から独自構成がいろいろと入ってた。「金明竹」はすごく面白い話なので、おふざけもいくらでもありだと解釈されているみたいだ。大阪商人を外国人にして演じるものもあるみたい。でも、ぼくはこれ、改変なしでやった方がはるかに面白いように思う。入船亭辰じんの「金明竹」は良かったな。

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尚、客席側にも史上最高の核爆弾がいる日だった。他の人が誰も笑わないところで笑ってるのはまあいい。ただ噺家の言葉をリピートして呟くのにはまいったな。何かの病気なのかもしれないけれど、あれが「俺の呟きは落語好きにとっては面白いはず」なんて思っているんなら最悪。前座が出ているときにはあまりに彼のツブヤキが気になって、もう帰ろうかと思ってしまった。

ま、さん若が出てきてみると、彼のツブヤキを圧倒する「話の魅力」があるにはあった(もちろん邪魔は邪魔なんだけど)。変なところで前座と二つ目以降の実力差を感じたりもした一日だった。

白酒がよくまくらで「落語は弱い芸です」ということを言ってるけれど、本当にそう。寄席ってのはどうやら5回に1回くらいは「耐え忍ぶ」回になってしまうようだ。

余談:菊之丞の代演だった橘家文左衛門の入りがぎりぎりになった。二つ目なんかが控え室から出てきて「大丈夫かなあ?」と不安に感じてたな。文左衛門いわく「忘れてました、すみません」。楽屋入り開口一番は「わりい!」だった。