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『紙婚式』山本文緒 review

ぼくはとても幸せだ。人にも「おまえが幸せじゃないと言ったら殺してやる」と言われているくらい、幸せだ。

でも、そんな脳天気なぼくに、「幸せってなんだよ」と突っ込んでくるのが山本文緒

たとえば、だ。

こんな会話に「不幸」は見えるだろうか。

あるいは、次のような「調子くれた」話に「不幸」が見えるだろうか。

逆に、次のような文章はどうだろう。隠れている「不幸」が現出しそうな怖さを感じたりもする。

ぼくらは、物語の伏線を読み、「不幸」が訪れるのか、「幸福」が描写されるのかを想像する。しかし山本文緒はそれを裏切る。読者受けする「伏線の回収」によるのではない。山本文緒は「幸福」と「不幸」に違いなんてないじゃないか、と問いかけるのだ。

冒頭に記したが、ぼくは「幸福」だ。しかし、その「幸福」は、「不幸」と「どのくらい」違うのだろう? 山本文緒は、その違いを150字以内で述べよと迫ってくる。「不幸」も「幸福」も「人生」だ。「始まって」そして「終わる」ものだ。そんな中で感じる「幸福」と「不幸」の間に、どれだけの差があるのかと問い詰めてくる。

もちろんその詰問は、「誰もみな意味のない不幸を生きている」なんていう、ありきたりな結論を導くためのものではない。彼女は、「それでもあなたは幸せですか?」と問いかけてくるのだ。その問いに返答できる力を得た人は、現世を幸せに送ることができる。つまり、この小説群は、幸福に暮らすためのレシピ(アイデア)を与えてくれているのだ。


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